敗戦真相記—予告されていた平成日本の没落
2007年7月19日(Thursday) 05:51pm 政治 書評 歴史1945年9月に広島で太平洋戦争の敗因を見事に語りつくした講演があった。永野護(wikipedia)によるもので、この本はその講演を現代かな遣いに直して再刊したもの。
『敗戦真相記―予告されていた平成日本の没落』
永野 護
とにかく日本がいかにして負けたのかが、手にとるようにリアルに伝わってくる。重要な敗因に絞って状況をよく表すエピソードを豊富に紹介しているので、難しい理論いっさい抜きに当時のバカバカしさ加減を共有できる。
しかも、これがいまの日本にもそっくり当てはまるから困ったものだ(それを指摘することが近年再刊された目的なのだが)。
だいたい終戦の翌月にここまで話が整理されていること自体、一部の識者にはいかに負けるのかということまで戦時中から分かっていたということを物語っている。
そういう合理的な見方を一切排除して国粋主義の精神論で突っ走る日本は危険だという教訓がここにある。
なにが危険かというと、国が破産して全体が貧民に落ちる。
講演の後半では、負けてさあこれからどうするかという話題にうつるのだが、とにかく何もない、とくに食糧がないことが前提になっている。
有るものはただ土地と人間だけという感じであります。
余情人口約二千八百万人の労力を商品の形にして輸出して、その代償として食糧を輸入する以外にないのです
教科書の自虐史観(wikipedia)を叫ぶ連中はこの一冊を読んでからものを言えと言いたい。
永野が挙げた敗因には、「大人物の端境期」、「科学無き者」とくにマネージメントの欠如などがあるが、いまの日本も同じ問題を抱えている。
日本の官僚の著しい特性は一見非常に忙しく働いているように見えて、実は何一つもしていないことで、チューインガムをかんだり、ポケットを手に入れたりして、いかにも遊んでいるように見えて、実際は非常に仕事の速いアメリカ式と好対照を見せております。
という図式はいまも変わりない。最近では、年金を管理するのが本業の社会保険庁が名前すら記録していないということで、世間をあっと言わせた。
そんなことがまかり通っている国が、亡国でなくて何なのか。
戦争こそしていないが国の借金は戦時中並みの水準まで来ていて、大本営がどう言おうが平和裡の敗戦はかなりリアルだ。
なお、この本は『ぼくの血となり肉となった五〇〇冊 そして血にも肉にもならなかった一〇〇冊』で紹介されていたもの。
適切なエピソードで全体像をリアルに見せる語り口など、ディベートの組み立て方の面でも感銘を受ける素晴らしい本だと思う。
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